フランツ・カフカ「変身」

『ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹な巨大な虫に変わっているのを発見した。(新潮社 高橋義孝 訳)』

フランツ・カフカ「変身」。きちんと読んだのは初めてです。虫なら、グロテスクな表現が多いかなと敬遠していたのですが、違いました。

グレーゴルが虫に変身した朝、仕事に出掛ける時間はとうに過ぎて、両親に急かされても、姿を見せることはできません。とうとう上司の支配人が迎えに来ます。虫になったグレーゴルは苦心して自室のドアを開けます。巨大な虫に驚いて、支配人は逃げ帰り、父親のステッキで自室に追い返されるグレーゴル。翌日から妹が、グレーゴルの面倒を見ることになります。

怖いもの見たさで「どういう虫なのか?」と、気になりますが、カフカ自身は、虫の姿を扉絵に描いてほしくなかったそうです。『…次のような場面を選びます。両親と支配人が閉まったドアの前にいるところ、あるいはもっとよいのは、両親と妹が明るい部屋にいて、暗い隣室へのドアが開いているところ』

と、いうことで簡単にですが、描いてみました。暗い隣室はもちろんグレーゴルの部屋。グレーゴルは人間だった頃、一家を支える立場でしたが、虫になってしまったので、家族はそれぞれ働くようになります。夕食後、父は仕事着のままうとうとして、母は内職、妹は資格勉強といったところです。

明るい部屋が人間の世界、暗い部屋が虫になったグレーゴルの世界と、と考えると、絵画としても面白い題材ですね。
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