フランツ・カフカ「変身」。きちんと読んだのは初めてです。虫なら、グロテスクな表現が多いかなと敬遠していたのですが、違いました。
グレーゴルが虫に変身した朝、仕事に出掛ける時間はとうに過ぎて、両親に急かされても、姿を見せることはできません。とうとう上司の支配人が迎えに来ます。虫になったグレーゴルは苦心して自室のドアを開けます。巨大な虫に驚いて、支配人は逃げ帰り、父親のステッキで自室に追い返されるグレーゴル。翌日から妹が、グレーゴルの面倒を見ることになります。
怖いもの見たさで「どういう虫なのか?」と、気になりますが、カフカ自身は、虫の姿を扉絵に描いてほしくなかったそうです。『…次のような場面を選びます。両親と支配人が閉まったドアの前にいるところ、あるいはもっとよいのは、両親と妹が明るい部屋にいて、暗い隣室へのドアが開いているところ』

明るい部屋が人間の世界、暗い部屋が虫になったグレーゴルの世界と、と考えると、絵画としても面白い題材ですね。