花火大会〈前編〉

ブログの定番となりつつある「少年と少女」シリーズです。


男の子が浮かない顔をしています。階段に座り込んで、大きなため息。右手の手紙を見つめます。そこへ、郵便屋の小鳥が飛んできました。150828_hanabi_nayamu_sq01小鳥「手紙を出すの? それなら、ここで預かるよ」

男の子「ううん。これは彼女から届いた手紙なんだ。山にある天文台に一緒に行かないかって、お誘い」

男の子達が住む街は、山のふもとにあります。山には天文台があるのです。友達である、女の子は、天文台で働く学者と知り合いになって、今度、大きな天文台を特別に見せてもらう約束をしてきたのです。せっかくの機会なので、男の子を誘いました。

小鳥「面白そうだね。君が好きそう。行ってくれば?」

男の子「…うん、行きたいんだけれども、その前に花火大会に誘われていたんだ。どうしようか迷っていて、返事をしていなかったんだ。そしたら…」

小鳥「先週だったね。花火大会」

男の子「そうなんだ!! 返事をする前に、花火大会が終わってしまったんだ。彼女、怒っているだろうな…。それなのに、天文台なんて行けないよ」

小鳥「うーん、そうだな…。もし、本当に怒っていたら、手紙を書かない気がするよ。君から返事がないなら、心配しているかもよ」

男の子「ううん、きっと怒っているさ! だって、僕があげた花のヘアゴム。いつも髪につけていたのに、最近つけていないもの。会ったら、何て言われるだろう」

小鳥は目をしばたたきました。男の子は、会っていないのに女の子が花のヘアゴムを髪にしていないことを知っていたからです。

小鳥「それはね、…ううん。やっぱり自分で直接、聞いて」

男の子「え? 理由を知っているの!? 教えてよ!」

小鳥は首を横に振りました。「その代わりに、ひとつ提案があるんだ」


…続きはまた明日に。お楽しみに!
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