魔法の万年筆 4

小説家の話、昨日の続きです。

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4 今や、小説家は大ベストセラー作家になった。次々とやって来る執筆依頼。気晴らしに書いたエッセイもずいぶんヒットした。以前は、小説よりも趣味の万年筆コレクションの方が有名だった。だがそれは、過去になった。

けれども、一人の人間が書く枚数には限界がある。小説家は寝食を忘れ、ついに書斎の机に倒れた。二度と目覚めることはなかった。

この時、原稿を待っていた出版社がいくつかあった。出来上がっていた原稿の担当者は、そろばんをはじいた。遺作はまたとない大ヒットだった。

数年後、小説家を偲ぶ文学館が建てられた。小説家の万年筆コレクションも収められている。ただ、不思議なことに原稿を書くのに使っていた万年筆は見当たらない。執筆中に倒れたので、警察が調べたが、万年筆は見つからなかったそうだ。

文学館には、小さな喫茶店が併設されている。当然ながら、小説家のファンがよく訪れる。常連客に、いつもホットコーヒーを頼む、スーツ姿の男がいた。平日でも休日でも、かならずスーツ姿なのだ。胸ポケットにはペンのクリップが光っている。

時々ポケットからペンを取りだして、大事そうに眺めている。万年筆のようだが、男がそのペンを使って何かを書くことはない。

ファンの間では、消えた万年筆が謎がよく話題に上る。男はその話になると、いつも静かに微笑んでいる。



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4日間、お付き合いいただき、ありがとうございました。この『魔法の万年筆』は、夢に出てきたものです。夢では万年筆ではなかったですが…。

「いくらでも書けるペン」。私の場合は「いくらでも描けるペン」ですね。魅力的ですけれど、もしもあったら…と、話にしてみました。

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